こんにちは、knotです。
働き方改革の重要な事項にもなっていた「副業」ですが、新型コロナウィルスによる影響を受けて
すでに副業をスタートした方や収入源確保のためにこれから副業を検討している方もいらしゃるのではないでしょうか?
しかし一方で、
このような不安から、中々副業に踏み切れない方も多くいらっしゃると思います。
実際、2021年8月16日に公開された、パーソル総合研究所の調査によると、40.2%の方が副業をしたいと答えている一方で、実際に副業をしている方は18.8%という結果に留まっており、多くの方が関心を持っているにも関わらず、副業は広まっていないことが分かります。

この背景には、冒頭のような
「隠れて行ったらどうなるのか?」「もし会社にバレてしまったらクビになるのか?」
という疑問があるかと思いますので、今回は
上記の流れに沿って副業について解説いたします。
私は社会保険労務士の資格を活用し、本業では人事・組織に関するコンサルティングをしておりますが、BlogやYou Tubeといった副業もしています。
専門的な知識を持っていながら、実際副業を始める際に「副業 バレる」「副業 クビ」と検索するくらい、副業は不安なものだと思いますので、皆さんが安心して副業できるように具体例を用いてお伝えさせていただきます。
結論、副業はいつかバレるし、最悪クビになります!

副業を隠れて行ったことで、会社をクビ(解雇)になってしまった事例はあります。
「副業くらいでクビになるの?」と思いますが、裁判上の判決ですので会社の判断は違法ではなく合法と言えるでしょう。
しかし、隠れた副業が全てアウトというわけではなく、
一度クビ宣告をしたにも関わらず裁判で解雇無効とされた事例もあります。
クビになった場合・ならなかった場合の違いについて、裁判例を元に整理いたしましたので、それぞれ確認してみましょう。
【クビが認められた!】裁判例

小川建設事件(東京地決昭和57年11月19日)
概要
- 隠れて毎日6時間、キャバレーで勤務をしていた
判断基準
- 深夜まで働いており、余裕のある時間での副業とは言えない(本業に支障を来す可能性が高い)
- 副業の内容によっては企業の経営秩序を害し、または企業の対外的信用、体面が傷つけられる場合もありうる
橋元運輸事件(名古屋地判昭和47年4月28日)
概要
- 本業先の会社で管理職の立場であるが、競業先の別の会社にて取締役に就任していた
判断基準
- 管理職や取締役という立場から、本業先の経営情報が副業先に漏れる恐れがあるだけでなく、企業秩序に悪影響を及ぼす可能性が高い
- 本業先の就業規則で「二重就職の禁止」が職場の秩序を守るために定められていた
【クビが認められなかった!】裁判例

十和田運輸事件(東京地判平成13年6月5日)
概要
- 運送会社の運転手が年に1、2回の貨物運送のアルバイトを行った
判断基準
- 年に1、2回程度のアルバイトに過ぎず、本業に支障を来していない
- 従業員は、会社が副業について黙認していると認識していた
東京都私立大学教授事件(東京地判平成20年12月5日)
概要
- 教授が、勤め先の大学に無許可で語学学校講師として働いていた
判断基準
- 副業は夜間や休日に行われており、本業への支障は認められなかった
裁判結果から考える”隠れ副業”のリスクの大きさ
クビが認められた裁判と、認められなかった裁判の内容を整理すると下記のようになります。

もし隠れて副業をしている場合は、
「副業の内容がどのようなものなのか?」
「副業の時間はどれくらいなのか?」
この観点から、その副業をすることがどのようなリスクに繋がってしまうのか、検討してみてはいかがでしょうか。
なぜ”隠れて”副業をしているのに会社にバレるのか?
先程紹介した裁判は、どれも会社に秘密裏にして行っていた副業ですが、なぜ会社にバレるのでしょうか?
従業員からすると、最悪クビになってしまうので自分から「副業をしています」と宣言するわけにもいきません。
にも関わらず、会社に伝わってしまう要因は【内部環境の問題】と【外部環境の問題】にあります。
内部環境の問題
内部環境については、非常にシンプルです。
- 同僚等による告発
- 副業の現場を目撃される
基本的には、副業を知っている同僚等が人事部に密告したり、実際副業している姿を見られてしまうことで会社にバレることになります。
「副業で◯◯円も儲けている!」「本業以上に稼げて副業に集中したい」このようなことを職場の方に話しているとリスクは高まりますので注意すべきでしょう。
外部環境の問題
外部環境については、住民税と確定申告という国の制度が要因のため、仕方ありません。
住民税の観点
会社は、従業員に支払った1月から12月の給与を、従業員が住んでいる地方自治体に提出し、翌年に収めるべき住民税額について自治体から報告を受けます。
このとき自治体は、給与の合計金額に併せて住民税額を決定し納税を求めることになるのですが、この税額の決定は一つの会社の給与だけでなく、その従業員が受け取っている全ての収入を合算するのです。
支払っている給与と、控除されるべき住民税額が不釣り合いだと、
「この税額はおかしいのではないか?」と本業以外に収入があると会社にバレてしまうわけです。
確定申告の観点
従業員は、本業の会社以外から給与を受け取る場合、1月から12月の1年間に得た収入が20万円を超えてしまうと、翌年3月15日(※2020年・2021年は新型コロナウイルスの影響により4月15日まで延長)までに確定申告をしなければいけません。
確定申告が終わると、住民税の情報を「 主たる給与の支払いを受けている勤務先 (=本業にしている企業)」に通知されてしまうため、他に収入があることが会社に伝わってしまいます。
会社にバレないようにする方法はあるのか?
住民税や確定申告の件から以下の内容であれば会社にバレるリスクは極力減らせるといえます。
- 副業の収入が20万円以下の場合、確定申告は不要
- 住民税は申告は金額に問わず必要
- 特別徴収(会社から天引き)をするとバレるため、普通徴収(自分で納付)を選択
ただし、住民税については市区町村ごとに処理方法が異なりますので、お住いの市役所に確認することをオススメいたします。
そもそも副業の”禁止”って違法じゃないの?

ここまでは裁判例を元に、隠れて行った副業がどの程度リスクを抱えているのか解説しましたが、
「そもそも副業を”禁止”にすること自体、違法なのでは?」という疑問を持たれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は法律的な解釈をすると、会社が従業員に向かって「どのような副業もやってはいけません!禁止です!」
と命じてはいけません。
「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」
日本国憲法22条1項
これは職業選択の自由と呼ばれるもので、日本で働く人は誰しもこの憲法によって自由に仕事を選ぶことができます。(※公務員は例外です)
では、世間一般的になぜ副業の禁止ができているのでしょうか?
実は副業に関しては会社側にも一定の裁量が与えられていて、就業規則等によって副業を「限定的」に禁止することは違法ではないのです。
- 労務提供上の支障がある場合
- 企業秘密が漏洩する場合
- 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
- 競業により、会社の利益を害する場合
副業を全面的に許可すると本業が疎かになってしまう可能性もあるため、上記3つの要件に該当する場合に限り、副業を制限することは認められています。
どうして副業は”禁止”されるのか?
多くの企業では、「労務提供上の支障がある」として、副業を禁止していると考えられます。
「大副業時代」や「副業解禁」といった言葉を最近よく耳にすると思いますが、実は副業を許可している会社は多くないのです。
パーソル総合研究所の調査によると、副業を容認している企業は55.0%とまだまだ低い水準に留まっています。
働き方改革が始まる前の2018年度に比べても、3.8%しか上昇していないため、働き方改革やコロナ禍において増加する副業をしたいというニーズに反した結果と言えるでしょう。

副業禁止理由は、「自社の業務に専念してもらいたいから」が49.7%で最多となっており、次いで「疲労による業務効率の低下が懸念されるから」が42.1%、「従業員の過重労働につながるから」が39.7%。

従業員の疲労蓄積から、本業に支障を来されると会社として困るという考えが見られる結果といえます。
昨今、生産性の向上は多くの企業のテーマになっていると思いますが、良くも悪くも副業をすることで本業に影響は及ぼします。
副業をすることで成長をし、結果本業にも良い効果が生まれるという考え方もありますが、
従業員には本業に集中し、自社での生産性を高めてほしいというのが本音ではないでしょうか。
実際、経営者の方から
「認めていきたいが、どの副業を許可するのかという線引きが難しい」
「収入を増やすための副業なら、自社で仕事を頑張ってほしい」
このような葛藤や相談をよくお聞きします。
副業を安全に行うためのチェックリスト

副業をするにしても、いつバレるのか?という不安の元ではなく会社から応援されるように、堂々としたいですよね。
副業をする上で注意すべき点は、
- 会社に認めてもらいやすい内容
- 懲戒処分になりにくい内容
この内容を踏まえておくと、副業を禁止していても認めてもらえる可能性は高くなります。
簡易チェックリストを作成しましたので、考えている副業について照らし合わせてみましょう。
該当項目が少ない場合、その副業にはリスクがありますので 別のジャンルでの副業や、そもそも容認されている会社へ転職することをオススメいたします。
- 毎日夜遅くまで副業をしている為、本業に支障をきたしていないか?
- 本業での就業時間中に、副業をしていないか?
- 本業と同じような仕事を副業化しており、本業先の企業の売上や利益に悪影響を及ぼす可能性はないか?
- 本業で知り得た会社のノウハウや情報を、副業のために他の会社に漏らす等していないか?
- 社会的な信用を損なうような副業を行っていないか?
自分の将来や会社のルールを確認した上での副業を
会社員であっても、契約上の就業時間以外は本来自由に過ごすことができます。
当然、その時間に副業をすることは一つの選択肢ですが、 副業についてはいくつかルールがあります。
すぐにクビにならないと言っても、会社のルールを破ることで職場における人間関係に悪影響はあるでしょうし、隠れた副業はよくありません。
ルールを確認して、副業をするのかどうかしっかりと向き合っていきましょう!
本業に集中することは大前提です。一方的に副業が禁止されていることに違和感を覚えることはあると思いますが、自分の働き方には注意して会社と向き合う必要があります。