給与計算の担当者になった方や、社労士事務所で働いている方で、
このように考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
経理の仕事では簿記、総務であれば秘書検定の資格が思い浮かびますが、給与計算や人事労務に関する資格で、入門的に勉強ができるものについてはぱっと思いつくものもないかもしれません。
そんな方に、ぜひオススメしたい資格が「給与計算実務能力検定」です。試験内容は実務に直結しており、日々の仕事に役に立つ勉強ができます。
私は社労士として、従業員が1名の企業もあれば500名を超えるような、地方では大企業に位置する会社を30社ほど担当しておりました。 仕事の延長で給与計算実務能力検定の1級を勉強しましたが、実務に使える試験でしたのでぜひ見てみてください!
給与計算の担当になるために勉強をしたい方や、事務職に転職を考えている方に、ぜひ受験を考えていただきたい資格が「給与計算実務能力検定」になります。
検定では、給与計算に関わる上で必要な「労働基準法」をはじめとする様々な法律から、実際の実務を想定した問題まで幅広く出題されます。
人事・労務の仕事に興味がある方についても、勉強しやすい内容になっていますので、オススメです。
資格に興味がある方は、クレアールより無料の資料請求ができます。合格に向けた講座の案内ですが、独学で勉強する方でも検定の特徴や対策方法が確認できるのでぜひご確認ください。
給与計算実務能力検定とは?
給与計算実務能力検定とは、
「内閣府認可の一般財団法人職業技能振興会と一般社団法人実務能力開発支援協会」が主催している資格試験です。
給与計算は、どのような企業・個人事業所であっても、従業員を一人でも雇っている場合は必ず行う必要があるだけでなく、正確な処理が求められる業務です。そのためには、
- 労働基準法や最低賃金法といった労働法令、所得税や住民税などの税法の知識
- 社会保険、社会保障の仕組みや制度の理解
上記のような専門的必要になりますが、この検定では実務に直結する知識だけでなく、実務遂行力を測定するための試験になります。
給与計算については、
労働基準法第24条に
(1)通貨で、(2)直接労働者に、(3)全額を、(4)毎月1回以上、(5)一定の期日を定めて支払わなければならないと規定されています。
賃金支払の5原則と呼ばれており、これによって従業員を一人でも雇って事業をする場合は毎月給与計算が必要なのでず。
参考:厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei05.html)
「そもそも給与計算ってどんな仕事なの?」と疑問の方は、こちらの記事で解説しておりますのでぜひご一読ください。
給与計算実務能力検定は”役に立つ”資格なのか?
結論、人によります。
身も蓋もない話ですが、人事・労務に関係のある仕事をしている方は、幅広い知識のインプットができますので、役に立ちます。
また、求人票には「必要な免許・資格」欄に給与計算実務能力検定について記載がある場合もあります。そのため事務職や、給与計算業務、社会保険労務士事務所に就職や転職する際には一定の評価に繋がります。
ただし、この資格は簿記のように認知度はそこまで高くありません。資格に合格したからといって、必ず就職や転職ができるわけではありませんので、その点は注意しておきましょう。自分のスキルを証明する一つの指標として、活用することをオススメします。
では、具体的にどのような方が給与計算実務能力検定の試験に向いているのか、解説いたします。
受験するメリットがある人
給与計算実務能力検定に向いている人は、
- 総務や人事に配属した、もしくは給与計算の担当になった方
- 事務職に就職、転職を考えておりスキルを身に着けたい方
- 社会保険労務士事務所に就職・転職したい方
- 社労士試験を目指す、もしくは社労士試験に合格した方
- ブラック企業から身を守るためのコンプライアンス意識を身に着けたい方
このような特徴の方にぴったりの試験ですので、当てはまる方は取り組むメリットがあります。
総務や人事、給与計算担当になった方
給与計算の仕事は、専用のソフトを使って行うことが多くあります。ある程度自動で作業はできますので、深い知識は必要ない、と感じるかもしれません。
しかし、給与計算の仕組みを理解できていなければ、業務ミスに繋がります。
お金に関係する仕事のため信頼関係に傷が入りやすく、
- なぜ間違えてしまったのか?
- どのようにリカバリーすればいいのか?
- 同じ失敗をしないように次から気をつけることは?
しっかりとミスの再発防止策を考える必要があります。そのためには給与計算の本質から理解をしておかなければいけません。
仕事の品質を上げ、信頼される担当者になるために、総務や人事で働く場合には勉強することをオススメします。
事務職に就職、転職を考えていて役に立つスキルを身に着けたい方
日本には、約359万社の企業が存在していますが、どのような会社であっても一人でも従業員がいる場合は給与計算業務は必要不可欠です。そのため、実務ができる方の採用ニーズは会社の数だけ存在しています。
参考:2020年版中小企業白書より
就職活動・転職活動をする中で、未経験から総務や事務職の求人へ応募する際には
「実務もやったことがないのに、採用してもらえるのか」と不安になる方もいらっしゃると思いますが、
給与計算実務能力検定の勉強や、資格合格していることは
- 知識の土台ができている
- やる気やモチベーションがある
などの、自己PRの客観的な根拠付けができます。自信を持って就職活動に望みたい場合、メリットのある資格と言えるでしょう。
社会保険労務士事務所に転職したい方
社会保険労務士事務所で働きたいけど、社労士資格はハードルが高いために転職活動に踏み切れない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
社会保険労務士事務所の多くは給与計算を外部の企業から受託していることが多くあります。そのため、給与計算実務能力検定の勉強をしていると、面接時の良いPRポイントに繋がります。
一般的にまだマイナーな資格ではありますが、社労士業界では認知度の高い資格ですので、社労士事務所へ就職・転職したい方におすすめです。
社労士試験を目指す、もしくは社労士試験に合格した方
給与計算実務能力検定の問題には、労働基準法や社会保険関係からも出題されます。
社会保険労務士試験に役立つ知識が勉強できますので、
- 社労士試験に興味はあるけど、難易度が高いため受験を迷っている
- 社労士試験合格のために、周辺的な知識も学んでおきたい
社労士試験の土台を固めるために挑戦しやすい検定なのです。
また、社労士事務所で勤務する場合、給与計算や労働保険・社会保険などの手続き業務があります。このような実務は社労士試験では出題されません。社労士試験に合格し
- 独立開業を目指す方
- 社労士事務所に勤務して、人事労務のプロとしてキャリアを積んでいきたい方
このような方も取り組む価値のある資格なのです。
社労士事務所で働く場合、クライアントの数だけ給与計算に対応する必要があります。会社によってルールが異なるため、幅広い知識を持っていないと苦労することになります。給与計算の基礎を学ぶにはちょうど良い試験ですね。
コンプライアンス意識を身に着け、ブラック企業から身を守る
給与の仕組みが勉強できますので、毎月の給与明細書などを確認した際に
- 労働基準法などの法律を守っているのか?
- 労働条件通りに各種保険に問題なく加入されているのか?
などの法的観で問題がないのか把握することができます。
また、晴れて係長に昇格した際に、
「管理職になったから、残業代はありません」と社長から言われたとしても、
「何の裁量もない係長で残業がでないって、名ばかり管理職に該当するような……。あれ、うちの会社ってブラック企業?」
違法な取り扱いにもすぐに気がつくことができます。
正しい知識を持っていれば、転職活動に踏み切ったり、労働基準監督署に相談ができたりと、身を守るための対応策が増えます。
受験自体がデメリットになる人
一方で、給与計算実務能力検定に向けて勉強しても意味がない方も当然いらっしゃいます。
給与の仕組みや、労働基準法や社会保険関係の知識については、日本で働いている全ての人に関係がありますので、勉強をすることは価値があります。
ただし、資格合格を目標にした場合は
- 営業や技術職といった、バックオフィス業務に関係のない方
- 海外で就職を希望する方
- すでに給与計算の実務を5年以上積んでいて、自己PRに問題がない方
上記の方については、就職活動においても「一定の努力ができる人」としか評価されることがないため、希望する職種に関係する資格の勉強をした方が良いですね。
また、給与計算をはじめとするバックオフィス業務については、実務経験が重要です。しっかりと経験を積んでいる方は別の資格を狙った方がキャリアアップに繋がります。
給与計算実務能力検定の試験について
試験の概要
給与計算実務検定には「2級」と「1級」にコースが分かれていますが、
- 受験資格
- 試験会場
- 試験形態
この3つは共通する項目になります。試験に申込む前に必ず確認しておきましょう。
受験資格
給与計算実務検定に、受験資格はありません。学生でも、社会人でも、自由に受験することができます。
また、1級の受験に関しても制限はなく、2級未受験であっても申し込みが可能です。
試験会場
2021年11月における試験会場は、次の通りです。
2級・1級とも会場ともに、全国23箇所で実施されていますが、各会場は申込み先着順のため、定員に達した場合には近隣の他会場で受験となります。受験を考えている方は、申込み時期には注意してくださいね。
北海道 | 北海道建設会館 | 宮城 | 東京エレクトロンホール宮城 | 栃木 | 宇都宮市文化会館 |
埼玉 | ソニックシティ | 東京 | 専修大学 神田キャンパス |
千葉 | 千葉市教育会館 |
神奈川 | 神奈川産業振興センター | 長野 | JA長野県ビル | 静岡 | 静岡県産業経済会館 |
愛知 | 桜華会館 | 京都 | 京都テルサ | 大阪 | 大阪私学会館 |
兵庫 | 兵庫県民会館 | 新潟 | 新潟テルサ | 石川 | 石川県地場産業振興センター |
広島 | 広島YMCA国際文化センター | 岡山 | ビーマックス国際情報館 | 香川 | サン・イレブン高松 |
福岡 | 福岡県教育会館 | 大分 | J:COM ホルトホール大分 | 熊本 | 熊本県教育会館 |
鹿児島 | 宝山ホール(鹿児島県文化センター) | 沖縄 | 沖縄県青年会館 | 参照:(受験要項)第16回給与計算実務能力検定2級より |
試験形態
試験形態も変わりません。
- 出題される問題数:40問
- 試験時間:120分(2時間)
ただし、1級の試験は一部記述式で答える必要があるなど、難易度が異なる点は念頭に置きましょう。
【比較】2級と1級の合格率や目安となる勉強時間は
給与計算実務検定を受ける上で、2級と1級のどちらを目指すか迷われるかもしれません。
- 試験回数
- 合格率
- 目標時間
- 受験費用
については、難易度が分かりやすいように比較表にまとめました。ご確認ください。
2級 | 1級 |
---|---|
試験回数 | |
年2回 3月・11月実施 |
年1回 11月のみ |
合格率 | |
74.34% (受験者1,407名中、1,046名合格) |
56.91% (受験者1,643名中、935名合格) |
目標勉強時間 | |
40~50時間 期間にして1ヶ月~1ヶ月半程度 |
50~60時間程度 期間にして1ヶ月半~2ヶ月程度(2級の知識があることを前提) |
受験費用 | |
8,000円 |
10,000円 |
2級を未受験であっても、1級の試験を受けることはできます。ただし、2級で求められる知識が前提となっていますので、飛び級される場合はしっかりと勉強しておきましょう。
【比較】2級と1級で問題や対策はどう違うのか?
次に、試験の核となる問題のレベル感や出題範囲を確認しましょう。
2級合格を目指す上で問われるレベル
検定を運営している実務能力開発支援協会によると、
実務上の基礎となる労務コンプライアンスについて正しく理解し、基本的な給与計算を行い、給与明細を作成できるレベル。一般職員として、年末調整以外の通常の給与計算と賞与の計算ができる。
https://jitsumu-up.jp/about/
2級の検定レベルはこのように定義されています。具体的に身に付く能力も
- 給与計算の基本的知識
- 社会保険手続の基本的知識
- 賞与計算の基本的知識
- 給与計算実務に関連する労働法令についての知識
- 社会保険制度についての基本的知識
基本的なものばかりとなっています。
給与計算実務の未経験者や、人事労務の基礎をこれから学ぶ方に向いているレベルといえます。
- 給与計算業務にはじめて携わる方
- 給与計算担当者として実務に当たる方
- 給与計算の全体像から勉強したい方
2級の試験では、次のような問題が出題されますので、興味がある方はぜひ解いてみてください。
A~Dのうち、労働基準法における割増賃金に関する記述として、正しいものはどれか。なお、時間外労働の時間数は、1か月当たり60時間を超えていないものとする。
【A】1日に8時間を超える時間外労働をさせ、その労働が午後10時以降となり深夜労働となった場合、その深夜労働となった時間分の割増率は、2割5分以上の率とする必要がある。
【B】法定休日に労働させ、その労働が8時間を超えた場合の割増率は、3割5分以上の率とする必要がある。
【C】法定休日に労働させ、その労働が午後10時以降となり深夜労働となった場合、その深夜労働となった時間分の割増率は、3割5分以上の率とする必要がある。
【D】法定休日でない休日の労働について、割増率を2割5分として割増賃金を支払うことは、労働基準法に違反する。
引用:https://jitsumu-up.jp/about/#anchor04
1級合格を目指す上で問われるレベル
1級の難易度は、当然2級よりも高く設定されており、
労働法令や税務についても正しく理解し、複雑な制度やイレギュラーな給与体系にも対応可能。また、年末調整を含め年間を通じて給与計算に関するすべての業務に精通したレベル。社会保険や税務等付随する手続きを行うことができ、リーダーとして給与計算業務の管理ができる。
https://jitsumu-up.jp/about/
「変形労働時間制度」が適応されている場合の対応方法や、年末調整といった給与計算業務に関連する実務が全て対応できるレベルと定義されています。1級の勉強・合格を通して
- 給与計算の総合的知識
- 社会保険手続の総合的知識
- イレギュラーなケースの賞与計算
- 退職金に関する知識
- 年末調整に関する知識
2級よりも広く・深く学習する必要があります。
そのため、給与計算リーダーとして活躍したい方に向いているレベルの試験です。
- メンバーが行った給与計算のチェックをするなどの責任がある方
- リーダーとして業務統括を任されている方
- 社労士事務所で勤務し、様々な企業の給与計算に関わる方
1級の試験では、次のような問題が出題されます。
A~Dのうち、フレックスタイム制及び1年単位の変形労働時間制に関する記述として、誤っているものはどれか。
【A】フレックスタイム制の清算期間は、「1か月以内の期間」としなければならない。
【B】フレックスタイム制の対象となる労働者に、清算期間における法定労働時間の総枠(1週間の法定労働時間×清算期間における暦日数÷7)を超えて労働させていた。この場合、その総枠を超えた時間は、時間外労働である。
【C】:1年単位の変形労働時間制の採用にあたっては、1日の労働時間には限度は設けられていないが、1週間の労働時間には限度が設けられており、その範囲内で、必要な定めをする必要がある。
【D】1年単位の変形労働時間制の採用にあたっては、連続して労働させることができる日数に限度が設けられており、その範囲内で、必要な定めをする必要がある。
引用:https://jitsumu-up.jp/about/#anchor04
社労士資格を持ち、給与計算の担当を約30社程もっておりましたが、1級の問題は中々難しかったことを覚えています。かなり高いレベルの知識を求められますので、人事労務でキャリアアップを目指す方はぜひ検討してみてください!
給与計算実務能力検定に合格するには?
給与計算実務検定は、合格率から見ても独学で十分合格ができる試験です。
ただし、試験の全体像や、学習スケジュール、勉強する際の注意点については確認しておくことをおすすめします。特に給与計算未経験者の方は、
- 給与計算がどういった仕事なのか?
- 初学者が勉強する上で注意すべきポイントは?
こういった悩みもあることでしょう。
大手資格学校のクレアールが、給与計算実務能力検定に関する講座案内を無料で発行しておりますので、一度確認してみることをおすすめいたします。
給与計算の実務に触れている方は、参考書に沿って学習するだけで十分合格が可能な試験です。
一方で、給与計算初心者の方や、未経験ながら事務職に転職するために頑張りたい方は、
- 合格に向けた学習スケジュール
- 効率的な勉強方法
を押さえておかなければ、単にテキストを読む勉強をしていても非効率になりがちです。
資格学校が発行する講座案内は、資格の全体像が把握できるので、見る価値があります。無料で資料請求できますので、独学前提で勉強をされる方もぜひ確認しておきましょう。
独学の際に活用すべきテキスト
検定を運営している一般社団法人実務能力開発支援協会から、公式のテキストが発行されています。
基本的にはこのテキストをしっかり勉強すれば問題ありませんので、目標とする等級にあわせて学習しましょう。
2級の公式テキスト
1級の公式テキスト
結論、給与計算実務能力検定はおすすめです
今回は、給与計算や人事・労務に関する資格検定について解説いたしました。
この資格を受験するか迷っている方に向けて、
検討したい方、検討する必要がない方を整理しましたので、ご自身のキャリア・将来の方向性に合わせてぜひ検討してみてください。
検定では、給与計算に関わる上で必要な「労働基準法」をはじめとする様々な法律から、実際の実務を想定した問題まで幅広く出題されます。
人事・労務の仕事に興味がある方についても、勉強しやすい内容になっていますので、オススメです。
資格に興味がある方は、クレアールより無料の資料請求ができます。合格に向けた講座の案内ですが、独学で勉強する方でも検定の特徴や対策方法が確認できるのでぜひご確認ください。
それでは、給与計算実務能力検定の試験内容について詳しく見ていきましょう。