こんにちは、社労士Campusのknotです。
社会保険労務士は、試験に合格するだけでは名乗れない=まだ社会保険労務士ではないことを、ご存知ですか?
昨今「働き方改革」の影響により、社会保険労務士の認知度は上がってきており、人事・労務のプロフェッショナルとして働くことを目標にされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
冒頭でもお伝えしましたが、試験に合格するだけでは社会保険労務士にはなれません。
私も「資格を取得したらすぐに独立しよう!」と最初意気込んでいたのですが、調べていく中で「え、資格取っても独立できないの!?」と自分の見通しの甘さに愕然としました(笑)
本記事では、25歳で社会保険労務士の試験に一発合格(当時の合格率4.4%)後、事務指定講習を受講により社労士登録をした経験から
社会保険労務士になるために必要な資格や手続きについて、お伝えいたします。資格合格したものの、将来のキャリアに迷われている方や、起業を検討している方の今後の歩み方に一助になれば幸いです。
社会保険労務士登録のための2つのステップ
試験通過後、その方の今までのキャリアによってどのように進んでいくのか分岐します。
弁護士、公認会計士、司法書士、税理士といった士業の資格は独占業務といって、各資格を持っている方しかできない業務範囲が法律で定められています。そのため「合格したら今すぐ開業して、バリバリ働くぞ!経験は無いけどこれから培う」という方もいらっしゃいます。
しかしながら、社会保険労務士の場合は注意が必要であり
- 2年以上の実務経験
- 事務指定講習を受講・クリア
このいずれかに該当しなければ、自分でオフィスを構えることも、事務所の看板を立てることもできないのです。
実務経験の定義
ここで定められている実務とは、全国社会保険労務士連合会によると下記の業務のことを指します。
- 雇用保険、健康保険、厚生年金保険の被保険者資格取得・喪失届に関する事務
- 健康保険、厚生年金保険の被保険者報酬月額算定基礎届・月額変更届に関する事務
- 雇用保険被保険者離職証明書の作成
- 労働保険の概算・確定保険料の申告・納付に関する事務
- 就業規則(変更)届に関する事務
- 時間外労働・休日労働に関する協定届の作成
- 労働者名簿の調製
上記の内、雇用保険・健康保険・厚生年金保険の被保険者資格取得・喪失届に関する事務は特に想像がしやすいので、簡単にご紹介します。
皆さんの給与から、毎月「雇用保険料」や「健康保険料」「厚生年金保険料」の名称で控除されている項目はありませんか?
過去、初めて社会人になり、初任給が振り込まれた際に「保険料ってこんなに給与から引かれるの?」と愕然とした方もいらっしゃると思いますが、
株式会社や有限会社といった法人格をもつ会社は、正社員を採用すると必ずこの「各保険」に従業員を加入させなければいけません。
「被保険者資格取得・喪失届に関する事務」とはその加入や退職に伴う保険資格喪失の手続きのことを指します。
人事部・総務部や、社会保険労務士事務所での勤務をしていると、こういった仕事に携わることもあると思いますが、そういった経験のことを「実務経験」として認めてくれるのです。
事務指定講習とは
未経験の方であっても、心配は不要です。
別業界からの方でも安心して目指せるように、2年の実務経験と同等の経験値を養う機会として、研修を受講することができます。
事務指定講習の課題図書として、全国社会保険労務士連合会よりこのような3冊の本が郵送でいただけます。
当時のテキストですので第36回になりますが、今年も同じと聞いているので外見は毎年変わらないようですね。ちなみにテキストは適用編・給付編合わせて600ページ程度ありますのでかなり分厚い作りです。
このテキストと研究課題書を用いて、次のようなスケジュールに沿って進めていきます。
通信指導課程
通信指導課程とは、申し込んだ翌年2月から5月までの4ヶ月間のうち、与えられた26の事例(問題)に対して資料を作成し提出します。資料作成といっても0➔1ではなく、回答用紙がありますので御安心ください。
通信指導課程では、
株式会社◯◯が、2020年4月1日に従業員を2名採用することになりました。その内、△△さんの入社手続きをしてください。
実際に社会保険労務士として求められるスキルを想定されており、事例ごとに手続きの作成をしていきます。テキストには、作成例や解説が記載されておりますので、初めての方も安心して取り組みができます。
また、提出した課題については全国社会保険労務士連合会の担当者より添削を受けることができますので、示唆を得れます。
面接指導課程
面接指導課程とは、通信指導を期日内に完了することで後日実施されます。
面接指導の名前とは裏腹に、セミナー形式で講師となる先輩社労士のお話を一方的に聴講するのみですが、4日続けて9:30から16:30までの時間を拘束されることになります。
また、会場は全国の都道府県ではなく東京・愛知・大阪・福岡でしかありませんので遠方の方は自費で旅費を準備しなければいけませんし、この4日間は無遅刻・無欠席かつ、申し込んだ会場に行く必要があるため勤務している方は有給休暇等が必要です。社会人の方はハードルが高いですが、2年の実務経験が免除になると考えると当然必要な投資かと思います。
- 労働基準法・労働安全衛生法、労働者災害補償保険法
- 雇用保険法・労働保険の保険料の徴収等に関する法律
- 健康保険法・厚生年金法
- 国民年金法・裁定請求手続
内容については、通信課程の段階で利用していた2冊のテキストを講師の方が読み上げながら、解説が入る形です。実務のお話が聞ける場合もありますが、講師の方次第というのが残念なところです。
ディスカッションも、聴講終了後にテストもありませんので、4日間参加することで面接指導課程は終了です。最終日の帰り際に証明書を受け取り事務指定講習完了となります。
事務指定講習の受講は役に立つのか?
通信課程では、手続き業務を中心に、勉強することができますが、あくまでも架空の事例を紙面上で対応するだけです。
面接課程では、先輩社労士から生の事例等もお聞きできますが、基本的にテキストを読み上げているため「明日から活用できる知識なのか?」と問われると疑問が浮かびます。
私は試験合格直後に、社会保険労務士法人に転職しOJTで学びつつ、事務指定講習に参加しましたが、やはり自分で試行錯誤した事例が今の仕事に活きております。
ただし開業する予定がない方や、転職や職務変えが出来ない場合は、事務指定講習にも
- 最低限知ってくべき手続きの作成方法や注意点を学べる
- 面接課程では、現場の先輩社労士の事例も聞ける場合があり、今後の業務の参考になる
- 受講後は社会保険労務士として登録が可能であり、企業からの信頼度が向上する
上記のような受講するメリットはありますので、検討してみてはいかがでしょうか。