こんにちは、knotです。
自身のキャリアステップを見据えるにあたって、
このように感じることはありませんか?
今回は、人事・労務の業界に注目し、専門的である社会保険労務士事務所での就職なのか、裁量権の多いベンチャー企業で働くのか
どちらがより自分のキャリア向上に繋がるのか
実際に社会保険労務士法人にて約3年間・現在メガベンチャーとも呼べる一部上場企業で働いている経験を軸にお話いたします。
私も社会保険労務士の資格を目指しているときは「どの道に進むことが自分のキャリアを最大化できるのか」とよく悩んでおりました。今回はそういった方の一助になれば幸いです。
社会保険労務士事務所vsベンチャー企業
前提として、社会保険労務士事務所も、ベンチャー企業における人事・労務もキャリアを伸ばすには最適です。
下記表はそれぞれの特徴(強みとなる部分)をまとめたものになります。
ターゲット・基幹業務・ノウハウ・制度設計・やりがいといった5つの観点から比較いたしました。各項目についてそれぞれどのような内容なのか解説します。
- ターゲット……業務における対象先
- 基幹業務……基本的かつ求められる業務内容
- ノウハウ……仕事をすることで知識量がどのように推移するのか
- 制度設計……環境改善に向けた制度設計がどのように実施できるのか
- やりがい……業務にあたってどの部分にやりがいを感じることができるのか
ターゲット
社会保険労務士事務所
社会保険労務士事務所がターゲットにするのは「中小企業」です。
その中でも従業員の数が10~30名前後が多く、人事・労務に関する担当者や部門が無いために専門家への依頼ニーズが高いからです。私が担当していた企業では、一部数千名を超える大企業もありましたがほとんどが30名前後の企業が多かったです。
ベンチャー企業
一方で、ベンチャー企業は「自社」の従業員や環境がターゲットとなります。
- 環境をどのように変えれば働きやすくなるのか?
- 従業員がイキイキと笑顔になるにはどのような制度が必要なのか?
- 採用した従業員が成長できるような教育はどう設計すれば良いのか?
その会社の人事・労務担当者として仕事をするため、当然自社の管理にコミットすることになります。
基幹業務
社会保険労務士事務所
社会保険労務士事務所では、主に各契約先から委託されます。どのような業務を主に実施するのかは、契約内容によってことなりますが、大阪大学の調査によると労務管理がメインであることが分かります。
開業社労士に、2016 年度に担当した業務の種類別の割合について答えてもらったところ、
1・2 号業務の割合の平均値は 56.0%と最も高く、次に 3 号業務の 26.3%、3 番目がその他の業務の 15.4%であった。紛争解決手続代理業務の割合の平均値は 0.9%であった。
大阪大学大学院法学研究科【第2部 社会保険労務士の業務展開についての アンケート調査】
業務内容
|
度数
|
最小値
|
最大値
|
平均値
|
標準偏差
|
---|---|---|---|---|---|
1・2号業務割合 (手続業務) |
849
|
0
|
100
|
56.0
|
31.6
|
3号業務割合 (コンサルティング業務) |
849
|
0
|
100
|
26.3
|
24.8
|
紛争解決手続代理業務割合 |
849
|
0
|
60
|
0.9
|
4.2
|
その他の業務割合 |
849
|
0
|
100
|
15.4
|
27.2
|
56.0%と半数以上を占めている「1・2号業務割合(手続業務)」を簡単に説明いたしますと
従業員の採用、退職する際に必要な保険への加入・脱退手続や、従業員の名簿、賃金台帳や就業規則といった各種書類の整備となります。
次いで26.3%の「3号業務割合(アドバイス・コンサルティング業務)」については、労務管理や社会保険などに関する相談の業務です。
あくまでも「外部的立場からの業務」になりますので、企業内情まで踏み込めないケースがあります。そのため入社・退職のサポートといっても必要な書類作成に留まる場合が多く、本当にその人が「会社に合っているのか」退職した人は「どのような理由・不満」があったのか、知ることができませんので、外注の弱みにもなり得ます。
ベンチャー企業
ベンチャー企業における人事・労務管理では、自社の採用から教育、退職時のフォローまで一気通貫でサポートすることになります。
採用を一例に上げるだけでも
- 採用戦略の立案(どのタイミンで何人採用するのか、どの程度コストが必要になるのか)
- 人材要件の定義(どういった人物像が会社に適しているのか)
- 求職者からの応募数の最大化(母集団形成のマーケティング)
- 面接(選考方法の構築や選考対応)
- 入社後のサポート(入社時の書類作成や受入れ体制の準備)
このように多くの仕事が必要になります。社会保険労務士事務所と異なり「内部的な立場」でしか経験できない業務も多いと言えます。
ノウハウ
社会保険労務士事務所
社会保険労務士事務所はターゲットでも上げた通り様々は中小企業に向けて仕事をすることになります。
業種や業界も多種多様であり「飲食・美容・病院・建設・運送・etc.」のように横断的に制限なくサポートをできますので業種・業界を超えた管理手法が集約可能です。
「同業種の会社では、こういった労務管理を行っていますので、御社にも活用ができます」
「別の業種では先進的にこのようなシステムを導入していますが、いかがでしょうか」
このような形で事例を元に契約先へ提案・コンサルティングが可能になりますので情報が集まることは非常に強みの一つです。
「社会保険労務士事務所に相談すると、最適解を教えてくれる」人事・労務情報のプラットフォーム化とも呼べるでしょう。
ベンチャー企業
整備ができていない環境を作り上げていくことになりますので、当然自社にノウハウがないケースが多く、都度調べながら仕事を進めます。
しかし、トライ&エラーの精神が重要ですので、調べた情報を即時実行し、どのような成果に繋がるのか体感できる環境ですので成長も速いことが強みです。
また、人事・労務の領域から考えると通常の会社ではすでにできている環境の維持や改善がメインです。ベンチャー企業では「0➔1」で仕事をすることになりますので非常に良い経験になります。
制度設計
社会保険労務士事務所
各契約先の中小企業に向けて各種制度設計をすることになります。そのため、積極的に提案をしたとしても、実際に仕事になるのかどうか、先方の意向によって左右されることになります。
しかし、契約先の企業全てが対象になりますので、
A社には人事制度の構築を、B社には組織風土向上の研修を、C社には退職金制度の設計……etc.
企業の数だけ制度もあります。また、退職金制度導入と言っても、
- どのような条件で退職金を支給するのか(在籍年数や実績)
- どの程度のボリュームであれば積立が可能なのか(支給金額と準備金)
- 雇用形態別に作成をするのか(正社員だけか)
一つの制度でも内容は異なりますので、専門的な事務所に入社すると様々な経験が積めることになります。
ベンチャー企業
自社の環境改善・向上のための制度設計に邁進しますので、企業のニーズに左右されることなく積極的に提案・導入が可能です。
ピアボーナス(仕事の成果や日常の行動に対して、従業員同士で感謝の気持ちを表し、報酬を贈り合う制度)のように独特な制度も提案できるなど一般企業では難しいものも体験できる可能性はあります。
ただし、同じ制度は導入できませんので再現性のある経験については難しいと言えるでしょう。
やりがい
社会保険労務士事務所
社会保険労務士事務所のやりがいは「多くの企業への影響力」です。
契約をいただける企業数だけ仕事はあり、10社10色の仕事に繋がりますので、その経験は更にキャリアの幅も広げられるでしょう。
加えて、「従来離職率の高かった企業に環境改善のアドバイスをした結果、優秀な人材の退職が止まり、組織が良い方向に成長した」このような会社の成長を隣で支えることができます。
外部の専門家だからこそのやりがいの一つと言えます。
ベンチャー企業の場合
ベンチャー企業では、自社への人事・労務管理へコミットします。働く仲間からはその内容に対する反響を聞けますので、自分のやっている業務がどの程度影響を及ぼしているのか把握できます。
また、
- 誰か他の人がしてくれる
- 誰かに指示を受けて仕事をする
このような受け身の姿勢では仕事ができませんので、自ら考えて提案・実行ができる積極的な方であればやりがいは非常にあるでしょう。
まとめ
今回は社会保険労務士事務所とベンチャー企業における人事・労務と比較いたしました。
人事・労務の業界に答えはありませんので、どのような経験が積めるのか入る企業によって大きく異なります。
しかし、どちらの会社もやりがいや業務内容はありますので、5つの項目ごとに自分の軸がどちらに沿っているのか考えてみましょう。
私も社会保険労務士法人にて勤務していた経験を評価していただき、一部上場の企業にキャリアアップできました。