仕事・独立

勤務社労士とは?業務範囲や年収、登録のメリットをお伝えします

社会保険労務士の資格を目指している方や、試験に無事合格された方の中には

  • 試験に合格したものの、どのように活用できるのか分からない
  • 今後のキャリアをどのように歩めばいいのか知りたい
  • 独立はしたくないけど、資格が役立つ仕事をしたい
  • 勤務社労士って、何ができるの?登録するメリットはある?

このように悩まれる人もいらっしゃるかと思いますので、今回は勤務社労士としての働き方をお伝えいたします。

knot

社会保険労務士の資格に合格した後のキャリアは、独立だけではありません。

私は社会保険労務士として人事・労務の業界に入り7年目を迎えましたが、多くの勤務社労士の方と出会うことがあります。企業内社労士でしか味わえない魅力もありますので、解説しますね!

この記事でお伝えできること


  • 勤務社労士として働く魅力
  • 勤務社労士にできること、できないこと
  • 人事労務の業界に飛び込むための3つのステップ

勤務社労士とは?開業社労士との違い

社会保険労務士の資格を登録する場合、

  • 開業登録:開業社労士として自分の事務所を設立し、顧客の社会保険労務士業務を行う
  • 勤務登録:雇われている企業で登録し、勤務先の社会保険労務士業務を行う

主に2つのキャリアを歩むことができます。医師も自分で病院を開くのか、大学病院等で勤務するのかに分けられると思いますが、同じようなイメージです。

資格を登録することに違いはありませんが、大きく異なる点として【業務範囲】と【入会費・年間費といった各種会費】があることを確認しておきましょう。

開業登録
勤務登録
  • 第三者から、社会保険労務士業務を受託することが出来る
  • 入会費:50,000円
  • 年間費:96,000円
  • 勤務先以外の第三者から社会保険労務士業務の受託が出来ない
  • 入会費:30,000円
  • 年間費:42,000円

※費用については、東京で社労士登録をする場合を例として記載しています。

開業社労士と勤務社労士の比率

社労士を目指す方

社会保険労務士って独立開業するイメージがあるけど、勤務登録している人ってどの程度いるんだろう?

knot

実は、勤務登録をして企業内社労士として活躍している人、結構多いんですよ!

社会保険労務士として登録している人の割合は令和1年末の時点で42,887人。

その内勤務社労士の方は15,790人(全体の約36%)、独立開業以外の道で働いている人がいらっしゃいます。

社会保険労務士の登録者数の推移

従業員を雇用すると、健康保険や雇用保険の諸手続き、毎月の給与計算・勤怠管理から人事評価など必要な業務が発生します。

総務や人事の機能は経営上必要不可欠であり、社会保険労務士の専門的な知識を活かすことができる場面ですので、企業内で勤務社労士として働くことは価値のある選択なのです。

社会保険労務士の業務とは?

社会保険労務士は、50種類を超える労働法令並びに社会保険諸法令に基づいて、

  • 労働基準監督署やハローワークといった公的機関への提出書類の作成(申請含む)
  • 労務管理上、企業で備え付けておくべき帳簿の作成
  • 労働環境の改善や向上に向けたアドバイスおよびコンサルティング

上記のような仕事を行っています。この業務範囲は、社会保険労務士法という法律によって定められており、社労士以外の人がこの業務を行って報酬を得た場合には、罰則も用意されています。

法律上の独占業務

社会保険労務士法で定められているこの業務範囲は「独占業務」と呼ばれています。

  • 1号業務
  • 2号業務
  • 3号業務

一般的には上記のように3つに分類されており、このうち「1号業務」および「2号業務」が独占業務となります。

1号業務とは(書類の作成および提出代行)

1号業務は、労働・社会保険関係諸法令に基づく提出書類の作成及び提出手続き代行業務です。具体的には、下記のような手続きがあります。

労働保険、社会保険の新規加入と脱退および被保険者資格の取得・喪失等の手続き

健康保険・厚生年金保険の算定基礎届けおよび月額変更届け

労働保険の年度更新手続き

健康保険の傷病手当金や出産手当金などの給付申請手続き

労災保険の休業(補償)給付や第三者行為の給付手続き

死傷病報告等の各種報告書の作成と手続き

解雇予告除外認定申請手続き

年金裁定請求手続き

審査請求、異議申立、再審査請求などの申請手続き

各種助成金申請手続き

労働者派遣事業などの許可申請手続き

求人申込みの事務代理

引用元:東京都社会保険労務士会


各種保険にまつわる書類の作成や関係する行政機関への提出が仕事内容になります。

第二号業務とは(帳簿作成)

2号業務は、法定3帳簿や、就業規則といった帳簿書類作成業務です。

法定3帳簿とは、

  • 労働者名簿
    • 労働者の氏名や入社日など会社がが雇用している労働者の情報を記載する書類
  • 賃金台帳
    • 労働者の賃金(給与)額や保険料・税金の控除額、各種計算根拠(労働時間や残業時間)などを記載する書類
  • 出勤簿
    • 各労働者の出勤日や労働日数、出勤・退勤時刻等を記載した書類

上記の書類をひとまとめにした名称ですが、どの企業であっても従業員を一人でも採用する場合は、作成が義務付けられています。

第3号業務とは(相談業務)

3号業務は、相談業務と呼ばれる幅広いものになります。

法律上は社労士の仕事とされていますが、独占業務ではないためコンサルティング会社やシステム会社が進出しているケースもありますが、社会保険労務士は法律で認められた唯一の人事・労務コンサルタントと言えます。

企業における第3号業務は、

  1. 賃金・人事制度および退職金制度の設計・運用
  2. 採用・異動・退職・解雇等の雇用管理
  3. 労働時間管理(休日・休暇を含む)
  4. 福利厚生
  5. 安全衛生
  6. 教育訓練
  7. 各種年金や高齢者雇用などに関する相談

会社における労務管理は多岐に渡りますので、上記はあくまでも一例になります。

勤務社労士の業務範囲

勤務社労士は、先程解説した独占業務を、勤務先に限って行うことができます。

基本的には勤め先の会社の人事・総務(労務)に関連する部署に配属することが多く、下記のような仕事に従事します。

人事部
総務部
  • 社員研修の企画や運営
  • 福利厚生の制度導入
  • 人事評価制度の運用
  • 従業員の保険の加入・喪失手続き
  • 労働時間や残業時間の管理
  • 毎月の給与計算

勤務登録時のメリット・デメリットとは?

勤務社労士は、業務の範囲こそ限られますが、士業の一員として働きます。独立開業ではなく、勤務社労士の道を選んだ場合、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

メリット

勤務社労士として、働くメリットは

  • 勤務先の同僚や上司から信頼される
  • サラリーマンとして働くため、開業時と比べて安定した収入が見込める
  • 開業社労士と人脈構築も可能になるため、困った時に相談ができる

上記3つが上げられます。

勤務先の同僚や上司から信頼される

社会保険労務士の試験に合格している=専門的な知識がある

と評価してくれるため、同僚や上司から労務相談を受ける場合があります。

私は今勤めているメガベンチャー企業にて、社会保険労務士の登録をしていますが、

  • 有給休暇の取得義務を果たすためにやるべきこと
  • 定年再雇用と年金の関係

このような相談を受けることがあります。勤務社労士という肩書きを信頼し、頼ってくれているのです。

knot

従業員のことを考えている企業は、社会保険労務士の資格者が社内にいる安心感・信頼性を十分理解していますので、勤務社労士は期待されるポジションとも言えます。

その分責任も重たくなりますが、やりがいがありますね!

サラリーマンとして働くため、開業時と比べて安定した収入が見込める

開業した場合は、クライアントとの契約ができなければ収入を得ることができません。

一方で、勤務社労士の場合はサラリーマンですのでクライアントの数は関係なく、勤務先の会社から給与をいただくことになります。

開業社労士と人脈構築も可能になるため、困った時に相談ができる

社労士の登録をすることで、社労士会が開催している研修や行事に出席できます。

多くの社労士と交流する機会になります。先輩社労士も多くいるため、労務管理の方法で困ったことがあれば相談ができるなど、人脈作りは欠かせません。

デメリット

勤務社労士として、働く際に知っておくべきデメリットは

  • 会費を自己負担するケースがある
  • 法的資格を扱うため、普通のサラリーマンより責任が重たい
  • 企業内の業務しかできない

上記3つが上げられます。

会費を自己負担するケースがある

勤務社労士として登録する場合であっても、年間費用が掛かります。

東京の場合は年間42,000円必要で、その他の県であってもほとんど変わりません。

資格はあくまでも個人に属するため、自己負担になる場合があるので注意が必要です。会社によっては会費を負担してくれる可能性もありますので上司に相談しましょう。

法的資格を扱うため、普通のサラリーマンより責任が重たい

社会保険労務士は国家資格です。登録をする以上、資格に関係する知識を発信する際には責任が生じます。

勤務社労士も開業社労士と同様にプロフェッショナルとして働きますので、常に勉強し、適切な知識を身につける必要があるのです。

企業内の業務しかできない

勤務社労士として企業の人事・労務の仕事をするとしても、他のメンバーも同じ仕事をしている場合には自分の価値がどこにあるのか、迷いが生じることもあるでしょう。

難しい試験を突破しても、自分にしかできない業務がなければモチベーションも下がる場合がありますので、注意しましょう。

knot

また、人事・労務の仕事は資格よりも知識・経験・人柄です。勤務社労士だからといって胡坐をかいてはいけませんよ!

勤務社労士の年収は?

せっかく難関な資格を取得したのであれば、収入も上げたいですよね。一般企業における勤務社労士の年収と全体的な年収相場を比較してみました。

年代
勤務社労士の年収
平均年収
カテゴリ
男性
女性
全体
男性
女性
40代
514万
416万
476~502万円
581~635万円
313~319万円

国税庁および厚生労働省から公表されているデータをまとめたものになりますが、社会保険労務士は他の仕事と比べて女性でも高収入を狙える可能性があると言えます。

男性の場合、平均よりも下回る理由はバックオフィス業務が主になることが要因だと考えられます。ただし会社によっては資格手当が支給される場合もありますので、実際に平均よりも下回るケースは少ないのではないでしょうか。

年齢は10歳以上若いですが、私はこの表記年収よりも高い給与をいただいております。

また、こちらの記事でも社労士事務所に務めた際の年収を実体験を元に解説しておりますので、ぜひご一読ください。

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勤務社労士になるためには?

勤務社労士として働くためには、資格の登録を行う際に勤務登録を選択をします。ただし、基本的には会社の名称や住所も伝えますので、会社には事前に相談・報告をしておくことがベターです。

これから就職・転職をされる場合は、一般企業のバックオフィス部門の求人を探しましょう。

勤務社労士の求人を探す

勤務社労士を探している求人は、下記のような企業が目立ちます。

  • 一般企業の人事・総務(労務)部門
  • 人材紹介会社や求人広告会社
  • 社会保険労務士事務所や会計事務所
  • コンサルティング会社(3号業務を行うため、資格者採用をしているケース有)

ただし、求人の多くは社労士の資格自体は歓迎要件とされている傾向が強く、必須要件にしている企業は少ないのが実態です。実務経験も重要視されるため、

未経験から企業内社労士を目指すのであれば、自己分析および企業分析は必ずしておきましょう。

転職サイト・エージェントを上手く活用しよう

これから社会保険労務士の資格を活かして転職を考えている方や、勉強をしながら企業内で人事・労務に関わるために転職がしたい方は、転職を成功させたいのであれば、転職サイトとエージェントは必ず利用しましょう。

特に転職エージェントのサービスを受けると、

「求職者と求人会社との間で、条件や考え方にミスマッチがないのか」判断した上で、自分に合った会社を紹介してくれます。

  • 勤務社労士として活躍が期待されている企業はどこなのか
  • 求人が出でいる企業のうち、自分がマッチしていそうな会社はどこなのか

このような内容についても詳細に相談できますので、利用しない手はありません。転職が初めての方であっても、職務経歴書や面接の進め方など手広くサポートしてくれますので、安心して転職活動ができます。

転職サイト・エージェント

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転職サイト・転職エージェントは一度登録をするだけで様々な求人案件を紹介してくれます。応募するも、見送るも自由ですので、まずは登録だけでもしておきましょう。

また、こちらの記事で転職エージェントを使うべき理由について解説しておりますので、迷われている方はぜひご一読ください!

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合格率4.4%だった社労士試験を一発合格。社労士法人で修行した後、メガベンチャーに転職。経営企画とかマーケティングとかコンサルティングをしています。