仕事・独立

【AIに代替されない社労士とは】無くなる仕事と必要とされる仕事

AIやSaaSといったテクノロジーサービスの発展で、

  • 社会保険労務士の仕事はなくなる?
  • AIと共存することはできるのか?
  • 必要とされる社労士になるためにはどうすればいいの?

このような不安を抱く方もいらっしゃるのではないでしょうか。

また、これから資格を目指している場合、せっかく頑張っても仕事がなくなるとどうしようもないですよね。

実際に、私が今働いている企業ではRPAの導入が進んでおり、社会保険労務士としての仕事は少しずつ、確実に変化しております。

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社労士の資格を取って6年ほど経ちましたが、当時と比べても社労士の在り方や仕事はかなり変化していますね。

しかしながら、社会保険労務士に期待される役割は重要性を増しており、無くなる仕事でもないと実感していますので、

AIやテクノロジーに代替されない社会保険労務士になるために必要なことを解説いたします。

今回の記事では、

この記事でお伝えできること


  • なぜAIに切り替わると言われているのか?
  • 実際に必要性がましている仕事と無くなる仕事
  • これから大切にすべき社労士のスタンス

テクノロジーに負けないためのノウハウをお伝えできればと思います。

社会保険労務士の現場からお伝えいたしますので、ぜひ興味を持った方はこの業界に飛び込んできてください!

結論、仕事はなくなりません!

社会保険労務士をはじめとする、士業の仕事は「人」であるからこそできる領域があります。

それは、専門家としての知見人に寄り添った課題解決の提案ができる業種だからです。

AIには、情報処理を強みとして数字を用いた課題解決は得意とされていますが、

「経営者や依頼者に対して、課題となる要因に対して効率性・重要性・必要性を提案し、最適な形で解決策を提案できるのか」

機械では算出できないオリジナルのアイデアを、相談者と同じ「人」だからこそ考えることができるのです。

ただし、今までと同じ様に仕事ができるわけでもありません。AIの発達によるリスクを押さえておきましょう。

統計的に「無くなる」確率は極めて高い

冒頭で、「人」だからこそできるため、仕事は無くならないとお伝えしましたが、

実は全ての仕事がAIやテクノロジーに取られないという意味ではなく、

取られる仕事=無くなる仕事のほうが多いことは知っておいてください。

それは社会保険労務士だけでなく、士業自体に関係しており、

2015年12月に公表された、オックスフォード大学(イギリス)と野村総合研究所の共同研究では、

「AIによる代替可能性の高い職業」として、

代替可能性率90%以上
  • 弁理士
  • 行政書士
  • 税理士

上記3つの士業は、非常に高い確率で人からAIに切り替わっていくと予想されており、

代替可能性率70%以上
  • 司法書士
  • 公認会計士
  • 社会保険労務士

社会保険労務士を含む3つの士業も、70%以上とされています。

士業
AIによる
代替可能性
資格試験合格率
主な業務内容
弁護士
1.4% 33.6%
(予備試験は
4.04%)
訴訟代理などの
法律事務
司法書士
78% 3.6% 登記や供託に関する
手続き
弁理士
92.1% 8.1% 特許などの出願・
登録手続き
行政書士
93.1% 12.7% 官公署に提出する
書類の作成
公認会計士
85.9% 10.7% 財務書類の監査・証明
税理士
92.5% 18.1% 税務書類の作成や
税務相談
中小企業診断士
0.2% 5.5% 中小企業の
経営コンサルティング
社会保険労務士
79.7% 6.6% 労務・社会保険に関する
書類の作成

※AIによる代替可能性は2015年12月公表の、野村総研と英オックスフォード大との共同研究による「10 ~ 20 年後に、AIによって自動化できるであろう技術的な可能性」【出典:日経新聞】を参考にして著者作成

実際に減りつつある士業の仕事

AIに切り替わるとされている社会保険労務士の仕事ですが、実際にはどうなるのでしょうか?現場経験から解説いたします。

実際、オックスフォード大学(イギリス)と野村総合研究所の共同研究の報告の裏付けとして、すでにテクノロジーによって税理士や社会保険労務士の仕事は減っています。

クラウド型のソフトが発達しており、

会計……銀行口座やクレジットカードの明細書を自動で取り込むシステムや、仕分けも自計化されることで税理士事務所の業務は変化

人事・労務……各種勤怠管理のデータをリアルタイムで集計し、即時給与計算に反映されるなど、給与計算を社会保険労務士に委託する必要性が変化

記帳代行業務や給与計算業務は既にニーズとして減りつつあります。

テクノロジーの発達により、士業事務所に対する業務委託の種類は変化しているため、AIによって仕事が減少することが懸念されて当たり前と言えます。

社会保険労務士業務の未来

具体的に、どのような仕事が減るのか考える前に、社労士の仕事について整理しておきましょう。

「社会保険労務士法」という法律に、社労士の仕事内容は定められており、

  • 1号業務
  • 2号業務
  • 3号業務

一般的には上記のように3つに分類されています。

それでは各号の業務内容と、AIやテクノロジーに代替されるのかどうか確認していきます。

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このうち「1号業務」および「2号業務」は独占業務と呼ばれており、社会保険労務士として開業していなければ報酬を得て仕事をしてはいけません。

1号業務とは(書類の作成および提出代行)

1号業務は、労働・社会保険関係諸法令に基づく提出書類の作成及び提出手続き代行業務です。

簡単に説明しますと、

  • 従業員を採用した際に必要な「健康保険」や「雇用保険」といった保険加入の手続き
  • 従業員が退職した際に必要な「健康保険」や「雇用保険」といった保険脱退の手続き
  • 従業員が妊娠・出産した場合における「健康保険」や「雇用保険」といった保険利用の手続き

このような、各種保険にまつわる書類の作成や関係する行政機関への提出が仕事内容になります。

また、企業の委託を受けるため、行政機関からの問い合わせ等のやり取りについても代行することになります。その際には専門的な知識が必要になりますが、書類作成自体は単純労働で「調べれば誰でもできる答えのある仕事」でもあるのです。

第二号業務とは(帳簿作成)

2号業務は、帳簿書類作成業務です。

法定3帳簿や、就業規則といった従業員を採用する場合には必要不可欠な書類の作成となります。

法定3帳簿とは?
  • 労働者名簿
    • 労働者の氏名や入社日など会社がが雇用している労働者の情報を記載する書類
  • 賃金台帳
    • 労働者の賃金(給与)額や保険料・税金の控除額、各種計算根拠(労働時間や残業時間)などを記載する書類
  • 出勤簿
    • 各労働者の出勤日や労働日数、出勤・退勤時刻等を記載した書類

特に上記の法定3帳簿は、従業員を採用する場合は必ず作成するだけでなく、3年間の保管が義務付けられている重要な書類です。

労務管理上、必要不可欠な書類ですが、専門的な知識がなければ適切に作成できないため社会保険労務士にアウトソーシングされるケースが多くあります。

第3号業務とは(相談業務)

3号業務は、相談業務と呼ばれる幅広いものになります。

法律上は社労士の仕事とされていますが、独占業務ではないためコンサルティング会社やシステム会社が進出しているケースもあります。

企業の人事・労務管理に関する相談に関して、指導・改善提案を行う業務になりますので、コンサルティング業務と呼ばれれています。

コンサルティング業務の一例
  1. 残業時間が人によってバラバラになっていて、均一的にする方法はないのか?
  2. 給与計算業務を自社でもできるように、仕組み作りをしてほしい
  3. 病気などで長期間休業する従業員の給与はどのようにすればいいのか?
  4. 労働時間の管理システムを導入したいが、自社の働き方に適したものを教えてほしい
  5. 有給休暇の取得が義務化されたが、仕事に支障が出ない取り方はないのか?
  6. 同業他社の給与相場や評価制度はどうなっているのか?
  7. 自発的に残業する従業員がいるが、対応の方法を教えてほしい
  8. ハラスメントが起きないように勉強会や研修はできないか?
  9. 会社を設立し、非常勤役員になるが、社会保険等の取り扱いはどうすれば良いのか?
  10. 取り組める助成金や活用のためのスケジュールを教えてほしい

上記は、私が経験したコンサルティング業務の一例になりますが、

専門家として、経営者からは経営に関する課題解決の方法を求められます

働き方改革や新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、人事労務業務は大きく変化しています。

また、2021年からは中小企業においても非正規従業員の賃金や雇用条件に関する待遇の見直しを求められるため、

3号業務は社会保険労務士は腕の見せ所と言えるでしょう。

AIができない仕事はあるのか?

テクノロジーが発展し、AIの業務領域は広がっていきますが、一方でAIにも「苦手」とされる分野があることをご存知でしょうか。

AIは日々進化していますが、人と同じように得手・不得手が存在しています。

社労士の仕事が無くなるのか考える上で、AIが苦手としている作業についても確認しておきましょう!

思考力や創造性が必要な仕事

AIは、過去のデータを基準として、物事の方向性や是非を判断します。したがって、事例がない出来事や、パターン化ができない複雑な問題について意見を問われる仕事については、AIにすべて任せることは難しいのです。

また、人の考えや意見に対する「共感」や「理解」を踏まえた上でのコミュニケーションもAIにはハードルが高いと言えます。そのため接客業やクリエイティブな仕事はAIは苦手とされています。

AIの操作を行う仕事

AIを活用するにしても、

  • どういった方向性でAIに作業を任せるのか?
  • AIで分析すべきデータは何があるのか?

何も定まっていない状況からAIが独自で動くことは難しいため、判断基準やパターン、処理方法は人が設定する必要があります。

責任を伴う仕事

2021年においても、世界的に「AIが法人格として権利能力を有する」という事例はないため、AIに責任を負うことはできません。

社労士をはじめとする士業は、法律に基づく独占業務がそれぞれ定められており、責任を伴う仕事になります。資格の有無で業務上に制限が生じるため、AIが士業を代替することは難しいのです。

無くなる仕事と必要とされる仕事

では、1号業務から3号業務のうち、AIに切り替わるものと「人」にしかできない業務とは、何でしょうか。

ここまで読んでいただいた方は恐らく理解されているかと思いますが

無くなる仕事
必要なため残る仕事
  • 1号業務……単純な書類作成
  • 2号業務……単純な帳簿作成
  • 3号業務……状況や意図をくみとるコンサルティング業務

このように整理することができます。

書類や帳簿作成は、効率性と正確性が求められますが、AIは「単純労働」と「データ処理」が得意なため、人がするよりもうってつけなのです。

一方で、「文章の解釈」や「考えること」についてはAIであっても苦手とされています。データ上から結論は出せたとしても、人と対話し、解決に導くスキルは備わっていないため、3号業務は社会保険労務士が必要とされる仕事なのです。

無くならないとはいえ、AIによるデータ分析は課題解決のための最適解を導くことができます。人事・労務相談に関するチャットボットなども開発されているため、コンサルティング能力がなければ、企業から必要とされない未来も近づいています。

AIに負けない存在になるために

今回の記事では、AIやテクノロジー時代における社労士の将来性について説明をいたしました。

社労士業務のすべてがAIに代替されることはありませんが、一方で無くなる仕事があることも事実であり、確定している未来です。

将来、AIではなく「〇〇先生だからお願いしたい」と言われるために、社労士として専門領域を高めていく必要があります。

  • 社労士事務所ですでに勤務している方
  • 社労士資格を目指している、合格したけど今後どうするか迷っている方

このような方に向けて、AIと共存するための方法やキャリアビジョンについて、最後にお伝えさせていただきます。

社労士事務所で働いている・独立を考えている方

AIやテクノロジーに代替される仕事は少なくありませんが、社労士に関して言えば、近年の法改正や、コロナの影響を受けて労務管理の手法は日々変化しています。

企業の未来を考えて、仮説をたてた提案ができる専門家は、経営者から必要とされるため活躍の幅が広がります。

ただし、士業の資格に胡座をかいていると単なる代行屋という扱いになり、頼られることはなくなるでしょう。

専門家を高め、人事労務から企業を支えられる社労士になるには、

  • 単なる書類の作成をするのではなく、課題解決の提案ができる
  • 経営者に寄り添い、気持ちを把握した上でコミュニケーションが取れる
  • 独占業務に縛られるのではなく、専門家としての価値を上げる

このようなコンサルティング能力を身に着けたいですね。

コンサル能力を学ぶためには、現場で学ぶことも重要ですが、「経営参謀としての士業戦略」という本はぜひ参考にしてほしいと思います。表題にもありますが、AI時代に求められる仕事として、経営者に寄り添うための手法が解説されています。

  • 士業(社会保険労務士含む)が経営者の参謀役として立ち回るためのノウハウが得られる
  • AIが発達する将来において「何を売るか」ではなく、経営者にとって「どのような存在になるのか」という姿勢が学べる
  • 約300近い事例を元に、相談への対応方法が記載されているため実践に近い知識を養える

他にも、社労士として活躍していきたいという方に向けてのノウハウ本を別の記事で解説しておりますので、ぜひご一読ください。

【成長できる5冊】社会保険労務士として第一線を走るための必読本 社会保険労務士事務所や一般企業で人事・労務関係の業務に従事する方の中で、 実務能力はある程度身についたので、更に知識を高めたい...

社労士資格を目指している・合格したけど今後どうするか迷っている方

社労士の資格を目指して勉強している方や、合格したものの「独立」するのか、企業で働くのか迷われている方は、

AI時代においても必要とされる「社労士事務所」や「人事コンサルティング会社」に就職することをおすすめします。

コンサルティング業務は、魅力的でやりがいのある仕事ですが、一朝一夕でコンサルティングの技術が身に付くものでもありませんので、地に足付けて経験することが大切なのです。

しかしながら、コンサル経験ができる社労士事務所は限られております。優良な事務所を探す場合、MS-Japanには必ず目を通しておきましょう。

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激動の現代においてますます将来性が期待される、この社会保険労務士という仕事に向けて一歩踏み出してみませんか。

ABOUT ME
knot
合格率4.4%だった社労士試験を一発合格。社労士法人で修行した後、メガベンチャーに転職。経営企画とかマーケティングとかコンサルティングをしています。